デザイナーに必要な能力として、ビジュアルを構築する論理的な思考力に加えて、洗練された「美しさ」を表現するための感受性があると思います。
人が何かに対して美しさを感じる時、眉間の少し上、脳の「内側眼窩前頭皮質(ないそくがんかぜんとうひしつ)」という部分が活発化することが、MRIなどを用いた実験で明らかになっています。おそらくデザイナーなどの「美しさ」を扱う職業に就く人は、この部分が敏感だからデザイナーになったのか、仕事でよく使う部位だから敏感になったのか分かりませんが、ある程度活発化しやすいのではないかと、私は思っています。
この「内側眼窩前頭皮質」は、単に景色や音楽など、視覚や聴覚などの知覚から感じる美しさだけではなく、より概念的である「道徳的な美しさ」を感じる時にも活発化することが分かっているそうです。例えば「他人を助ける行為」に美しさを感じることは、よくあることだと思います。そして、内側眼窩前頭皮質に損傷を受けた患者は、人道的に問題がある行為を行う人の「悪意」を正しく判断できなかったとの、臨床研究の報告もあるそうです。
人は「美しさ」に対する審美眼を自らに向けることで、「美しくありたい」「カッコよくありたい」と思うのでしょう。美しく生きることは時に負荷が大きく、大変な思いをすることもあると思います。しかし、社会的動物である人間の性質として、協力し、助け合い、他者のために行動できることが、ここまで命を繋いでこれた要因の一つであるはずです。
私は近い将来、子どもたちに対して、美しさへの感受性を高めるための教育プログラムができないかと考えています。そして、少しでも多くの人が美しさへの感受性が高まり、自らを美しく律することができる人が増えたら、この世界はもう少し素敵なものになるような気がしています。
参考資料:「神経美学 美と芸術の脳科学」石津智大 著(共立出版)